まず、久保さんがMさん夫妻を案内したのは三階建ての大きな家。
「こちらは私が設計を担当した I さんのお宅です。もしかするとMさんのイメージに近いかな、と思いまして」玄関脇には車イスも上がれるスロープ。玄関の上がり口はずいぶん低くなっています。「こちらにも年配のお父さまが?」「ええ。あちらも見てください。三世代住宅のお手本のような設計でしょう」久保さんが指差す先には広々と幅を持たせた階段。段差はとても緩やかです。思わずMさんのご主人も「へえ、これは広い」と感嘆の声。
「家庭用エレベーターを付けようかというご相談もあったんですが、まだまだ皆さまお元気ですからそこまでは、と。もし車イスになられても、階段の広さを確保しておけば車イス用の昇降機を後から付けることができるんです」「うちの義父も定年を迎えるとは言え、まだまだ元気ですものね」「年齢や生活に合わせて家を変えていけるって大事だね」
現在だけでなく、将来へのさまざまな配慮が行き届いた I さん宅に、Mさん夫妻は感心の連続です。
I さん家族の三世代全員がくつろぐ二階のリビングは、約15畳程の広々としたフラットフロア。奥にあるご両親の部屋への廊下にも段差がありません。洗面台は車イスに乗っても使いやすいようにボウルの下に空間がありました。
キッチンにはIHクッキングヒーター。「やはり安全面を考えてIHクッキングヒーターにされたんですか?」Mさんの奥さまが訊ねると、「もちろんそれもありますが、家計にもうれしいですから。建て替えの時、給湯器もエコキュートに変えて一気にオール電化にしました」と I さんの奥さま。1階のゲストルームにも小さなIHクッキングヒーターが設置されています。
「この部屋は、もしも体が不自由になっても1階で生活できるようにと設計してもらったんです」というおばあさま。「高齢者から子供まで、誰もが暮らしやすいこと、そして、ずっと先の安心まで考えることが大事です。それが、最近よく言われている“ユニバーサルデザイン”ということだと思います」Mさん夫妻の建て替え計画にも活かせるアイデアがたくさん詰まったお宅です。


段差を抑えた玄関の框(かまち)。

1mを越える横幅の広い階段。

広々としたリビング&ダイニング。大きなフラットフロアは明るく、やさしい雰囲気。

料理好きの奥さまは使いやすいIHがお気に入り。

現在は客間、将来は高齢者が使いやすい1階の和室。



