私のデビュー作は、演出家の宮本亜門さんの沖縄の家なのですが、その時学んだ「土地の空気や風を感じて内側から表現する」ということを、今もずっと大切にしています。東京から地元・香川へ戻ったのも、後藤哲夫らしさのヒントが、生まれた土地にあると感じたからです。
香川で私が好きな建築は、栗林公園の掬月亭(きくげつてい)。着物店のサロンを改修する時、思い浮かんだのは掬月亭の天井の障子でした。あとイサムノグチの「灯りシリーズ」を内側から見た感覚もイメージしたんです。地元の石を使用したり、地元の木工職人さんに入ってもらったこともあって、出来上がってみるとやっぱり香川を感じるものになりました。このサロンは、お話をいただく直前にちょうどフランスのニースに研修に行っていて、外から見た日本を意識できた作品でもあります。パリから来ていた建築家は、「ヨーロッパの建物は後世へ残すことを優先するので、とても保守的なんだ」と言っていました。ある意味で、日本の建築は作り替えることを前提とした建築です。それは伊勢神宮の※式年遷宮に見られるように、宗教観や技の伝承につながっている考えなのかもしれません。
今、地元の同世代の建築家グループで、家づくりの楽しさを啓蒙する活動を行っています。家づくりは、住む人の意識や気持ち、暮らしそのものを変えていける、楽しい作業です。そのことをもっと知っていただきたいし、私は私らしく、おおらかでのびのびとした讃岐っぽい家を提案したいと思っています。
※神宮式年遷宮…伊勢神宮の正殿などの建物を20年に一度新造し、御神体を新宮へ御還しする大祭。

さぬきの風土を生かした「サロン閑」

アジアンゲートハウス「沖縄の家」(宮本亜門氏邸)


